Geminiで「ポチッ」と買える時代!コーチ&ケイト・スペードのGemini対応から考えるこれからのEC
2026/09/25
「AIに相談しながら商品を選んで、気に入ったらその場で購入まで!?」そんな時代が、いよいよ現実になってきました。
2026年9月16日、コーチやケイト・スペードを展開するアメリカの「タペストリー社(Tapestry, Inc.)が、あるプレスリリースを出しました。両ブランドの商品が、GoogleのGeminiアプリと、AIモードを含むGoogle検索の中で、直接買えるようになったというものです。
「ブランドのサイトに行かなくても、AIとの会話の中で買い物が完結する」
SEOやECに関わる身としては、正直ドキッとするニュースでした。
これまで私たちは「検索で見つけてもらう → クリックしてサイトに来てもらう → サイトで買ってもらう」という流れを前提に、SEOやサイト改善を考えてきました。その「サイトに来てもらう」の部分が、なくなるかもしれないからです。
今回は、このニュースの中身を整理したうえで、これからどんな動きが加速しそうか、AI検索やECがどう変わっていくのかを、私なりに考えてみたいと思います。
目次-Contents-
何が発表されたの?要点をおさらい
まずは、今回の発表内容をざっくり整理してみます。
タペストリー社(Tapestry, Inc.)の発表概要
ポイントをまとめると、こんな感じです。
- ●コーチ、ケイト・スペードの商品が、Google検索(AIモード含む)とGeminiアプリ内で購入可能に
- ●購入方法は、単品購入のみ
- ●ブランドサイトへの移動は不要
- ●決済はGoogle Pay経由で、数タップで完了
- ●購入には、毎回ユーザー本人の明示的な承認が必要
- ●現在はアメリカのみで、今後ほかの地域にも拡大予定
実際の購入の流れ
使い方はとてもシンプルです。
GeminiやAIモードでの検索で、コーチやケイト・スペードの商品が出てくると、その場に「購入」ボタンが表示されます。商品を選んだら、あとはGoogle Payで数タップするだけで購入が完了するという仕組みです。
「このバッグいいな〜」と思ってから買うまでの間に、サイトを開く、カートに入れる、住所を入力する、といった手順がまるごとなくなります。
「勝手に買われる」心配は?
「AIが勝手に買い物をしてしまうのでは…」と不安になる方もいるかもしれません。
今回の仕組みでは、購入ごとにユーザー本人の承認が必要とされています。あくまで決めるのは人間、という設計ですね。
勝手に買われることはないのでご安心ください。
そもそも「UCP」って何?

今回のニュースで何度も出てくるのが、「UCP(Universal Commerce Protoco)」という言葉です。ここを理解しておくと、ニュースの見え方がかなり変わってきます。
「UCP」はAIが「買い物」をするための共通ルール
UCPは、AIが商品探しから購入、さらに購入後のサポートまでを担えるようにするための、オープンな業界標準です。Googleが2026年1月、全米小売業協会(NRF)の年次カンファレンスで発表しました。
これまでは、AIに「買い物」をさせようとすると、お店ごとに個別の連携を作る必要がありました。UCPは、その「お店の数だけ連携が必要」という問題を解決するものとされています。
ざっくり言えば、AIとECサイトをつなぐ「共通の言葉」のようなイメージです。
大手が名を連ねる規格
関わっている企業の顔ぶれもすごいです。UCPはShopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmartと共同で開発され、Adyen、American Express、Best Buy、Mastercard、Stripe、Visaなども支持を表明しています。
EC、小売、決済の大手がそろって乗っているので、一過性のブームで終わる可能性は低そうだな、というのが私の印象です。
「売り手」はあくまでお店のまま
もうひとつ押さえておきたいのが、取引上の販売者はあくまで加盟店のままで、顧客との関係やデータ、購入後の体験も加盟店側が持つ設計になっているという点です。
Googleが商品を仕入れて売るわけではなく、あくまで「Googleの画面の中にお店のレジが置かれる」ようなイメージですね。
OpenAIも同じ方向へ
ちなみに、同じような動きはGoogleだけではありません。OpenAIもStripeと共同で「ACP(Agentic Commerce Protocol)」という規格を作り、ChatGPT内で購入まで完結する「Instant Checkout」を展開しています。
「AIの中で買い物を完結させる」という方向性は、業界全体の流れになりつつあると言えるでしょう。
今回の事例が「ただの新機能」じゃない理由
UCPの仕組み自体は1月に発表されていたものです。それでも今回のニュースが気になったのには、理由があります。
ブランドを大切にする企業が動いた
コーチやケイト・スペードは、ブランドの世界観をとても大切にしている企業です。店舗の雰囲気や、サイトの見せ方にもかなりのこだわりがあったはず。
そんなブランドが「自社サイトの外で売ること」を受け入れたのは、「世界観よりも、お客さんが欲しいと思った瞬間を逃さないことを優先した」というメッセージにも読めます。
「出会いの場」はAIとの会話へ
タペストリー社のCEOは、この発表で商品との出会いの場の変化についても触れています。昔は店のショーウィンドウや雑誌、その後はSNS、そして今はAIとの会話の中で起きている、という趣旨です。
確かに、自分自身の買い物を振り返っても、「まずAIに聞いてみる」機会はかなり増えました。
1つのAIに賭けない設計
個人的に一番気になったのが、タペストリー社のCIO兼CDOのコメントです。今回作った仕組みは特定のプロトコルに依存しない設計で、消費者の行動が変われば別のAI環境にもすぐ対応できるようにした、という内容でした。
つまり「Geminiで売る」ことがゴールではなく、「これから出てくるいろんなAIの窓口で売れる体制を作った」ということです。
これから加速しそうな4つの動き

ここからは、私なりの考察です。今回のニュースをきっかけに、こんな動きが加速していくのではないかと考えています。
1. 参加するブランド・ECの急増
UCPはShopifyも開発に関わっているので、Shopifyのようなカートシステムが本格的に対応すれば、中小規模のECにも一気に広がる可能性があります。
「大手だけの話では?」と思っていたら、気づいたら競合がみんな対応していた、なんてことも起こりえそうです。
2.「単品購入」から「おまかせ購入」へ
今回はまだ単品の購入にしか対応していませんが、Googleは今後、関連商品の提案やポイント特典の適用といった機能も追加していく予定だとしています。
たとえば、「予算2万円以内で、明後日までに届く通勤用のバッグが欲しい。ポイントも使いたい」とAIに伝えれば、条件に合う商品を探して比べるところまでをAIが担当してくれる。あとは気に入ったものを選んで「購入」ボタンを押すだけ。
これから先、そんな世界が待っているのかもしれません。いくつものサイトを行ったり来たりして比較していた時間も、ぐっと短くなりそうですね。
3. 日本への上陸
今回はアメリカ限定ですが、他地域への拡大は明言されています。日本に来た場合、決済手段や、楽天・Amazonといった国内の大手モールがどう動くのかも気になるところです。
「アメリカの話だから、まだ関係ない」と油断せず、今のうちから準備しておきたいですね。
4. AI内の広告と購入ボタンの融合
以前の記事でChatGPT広告が日本でも始まった話をご紹介しました。
AIの回答の中に広告が出て、そのまま購入ボタンで買える。そんな「AIの中で集客から販売まで完結する」流れも、そう遠くないうちに来るかもしれません。
AI検索とECはどう変わっていくのか
では、こうした流れの中で、AI検索やECはどう変わっていくのでしょうか。
検索は「調べる場所」から「買える場所」へ
これまでの検索は、あくまで「調べる場所」でした。これからは、AIの回答そのものが比較・検討から購入までをカバーする、いわば「売り場」としての役割も持つようになっていくでしょう。
ユーザーがサイトに来なくても売れる時代へ
サイトへのアクセスが減っても、売上は立っている。そんな状況が当たり前になるかもしれません。
そうなると、PV数やセッション数だけで成果を測るのは難しくなります。
このあたりはAI検索でクリックが減る時代のKPIについての記事でも触れているので、あわせて読んでみてください。
「AIに選ばれるかどうか」が勝負に
AIが商品をおすすめするとき、判断材料になるのは商品の情報です。価格、在庫、サイズ、素材、配送日数、返品条件などですね。
つまり、商品データが正確で、AIが読み取りやすい形で整っているかどうかが、これまでの検索順位と同じくらい重要になってくると考えられます。
ブランドサイトの役割が変わる
購入の場がAIへと広がっていくと、ブランドサイトは「買う場所」から「ブランドを知ってもらい、信頼してもらう場所」へと、役割が変わっていくかもしれません。
AIで商品を見つけたお客さんが、「このブランド、どんな会社なんだろう?」と確かめに来る場所。そんなイメージです。
ただし、役割が変わるからといって「ブランドサイトはいらない」「SEO対策はもうしなくていい」という単純な話ではありません。
AIが商品やブランドを紹介するとき、その判断材料になるのは、Web上にある情報です。正確で信頼できる情報がサイトにしっかりと載っていてこそ、AIにも選ばれやすくなります。
そう考えると、AI対策を突き詰めていけば、結局はSEO対策の基本にたどり着くとも言えます。ブランドサイトは、これからもAI時代の土台であり続ける。ここはしっかりと押さえておきましょう。
気をつけておきたいこと
もちろん、いいことばかりではありません。
- ●お客さんとの接点が、Googleなどのプラットフォーム側に寄っていく
- ●特定のプラットフォームへの依存度が高まる
- ●返品やお問い合わせ対応の分担がわかりにくくなる
正直に言うと、「AIのおかげで売れる」は「AIがいないと売れない」と紙一重なんですよね。便利さとリスク、両方を見ておく必要がありそうです。
EC担当者が今からできる5つのこと

最後に、今から準備できることをまとめてみます。
1. 商品フィードと構造化データを整える
AIに商品を正しく理解してもらうための、いちばんの土台です。Merchant Centerに登録している商品データに、価格・在庫・サイズ・配送条件などの抜けや古い情報がないか、サイトの構造化データとあわせて見直してみましょう。
▶ 構造化データはSEOに効果がある?AIO時代に知っておきたい役割と注意点
2. AI経由の流入を計測し始める
GA4には「AI Assistant」チャネルが追加され、Search Consoleにも「生成 AI パフォーマンス レポート」が登場しました。まずは「AIからどれくらいの人が来ているのか」を把握するところから始めてみてください。
▶ GA4にAI Assistantチャネル追加。AI流入は”分析対象”になり始めた
▶ Search Consoleに「生成 AI パフォーマンス レポート」が登場
3. KPIを見直す
「サイトの外で売れた場合」も含めて、何を成果とするのかを考え直す時期に来ています。
これまでと同じKPIだけを追い続けていると、「アクセスが減った=うまくいっていない」と誤った判断をしてしまい、間違った方向に舵を切ってしまうおそれもあります。
▶ AI検索でクリックが減る時代、企業サイトは今何をKPIにすべきか
4. 自社のカートやECプラットフォームの対応状況を確認する
利用しているカートシステムやECプラットフォームが、UCPやACPに対応する予定があるかをチェックしておきましょう。
公式の発表を追うだけでなく、提供会社に直接問い合わせてみるのもひとつの手です。
5. AIに「推薦される」情報発信をする
レビューや比較情報、公式の見解など、AIが「このブランドは信頼できる」と判断できる材料を、日頃から発信しておくことも大切です。
自社サイトだけでなく、SNSや外部メディアでの評判も含めて、ブランドの情報を積み上げていきましょう。
【まとめ】AIに「選ばれる」準備を今から
今回のタペストリー社の事例は、「AIの中で買い物が完結する時代」の入り口と言えるニュースでした。
これからは「検索で上位を取ってサイトに呼ぶ」だけでなく、「AIに選ばれて、その場で買ってもらう」ことも考えていく必要があります。
とはいえ、やるべきことの本質は大きく変わらないと私は思っています。正確な情報を発信すること、そしてお客さんに信頼されるブランドであること。「いいSEOこそ、いいAIO」という言葉のとおり、これまで積み上げてきたことが、AI時代にもちゃんと活きてくるはずです。
日本に上陸してから慌てないように、今のうちから少しずつ準備していきましょう。

コールセンターから未経験でWEB業界へ転身し、育休を経てSEO会社に入社。目まぐるしく変化するこの業界に置いていかれないよう、日々アンテナを張りながら勉強中のワーママです。
趣味は小説や漫画で、活字を読むのが大好き。その「読む力」を活かして、記事作成業務なども行っています。






