WEBマーケは、平均化するほどWhyが消える。
2026/09/09 アクセス解析平均化GoogleAnalytics
WEBマーケティングは、数字でできています。
アクセス数、CVR、CTR、CPA、平均購入単価、平均エンゲージメント時間。
何千、何万人というユーザーの行動を数字に変えることで、私たちは「何が起きているか」を把握できます。
では、その数字から、
まで分かるでしょうか。
大量の人間行動を扱うためには、集計し、分類し、平均化する必要があります。しかし、その過程では情報が削ぎ落とされることがあります。
今回は、WEBマーケティングで起こりやすい「平均化の5つの落とし穴」から、この問題を考えてみます。
目次-Contents-
1. 平均化とは、「圧縮」である
昨日サイトを訪れた10,000人を、一人ずつ観察することはできません。
だから、
に変換する。
すると、
- 「CVRが下がった」
- 「スマホの離脱率が高い」
- 「この広告はCTRがいい」
といった傾向が見えてきます。
つまり平均化とは、
圧縮するから見える。でも、圧縮すると消えるものもあります。
圧縮したとき、何が消えているか?
WEBマーケの場面でよくある5つの事例を解説します。
「存在しない顧客」が生まれる|平均化の落とし穴1
あるECサイトの顧客データが、
平均購入額 :8,400円
平均滞在時間:2分13秒
だったとします。
「38歳くらいで、8,000円の商品を買い、2分ほどサイトを見る人がメイン顧客だ」と導き出してしまいそうです。
でも実際の購入データは、
40代は何も買わず、
50代は30秒で2万円の商品を買っている
かもしれない。
「38歳・8,400円・2分13秒」という人物は、どこにもいません。
架空の顧客が生まれる。
「違う人」が同じ人になる|平均化の落とし穴2
料金ページの離脱率が高い。
アクセス解析では、それだけです。
でも実際には、
Bさん:安すぎて不安になって離脱
Cさん:上司に相談するため離脱
Dさん:他社比較のため離脱。翌週戻ってきた
かもしれません。
ところがデータ上では全員、
です。
ここで「料金が問題だ」と判断すると、価格を下げたり、CTAを変えたり、問題のない場所を改善してしまう可能性があります。
クリックした。
離脱した。
問い合わせなかった。
平均化は、行動を残して理由を消します。
「小さな異変」が消える|平均化の落とし穴3
今月のCVRが、
2.0% → 2.1%
だった。
「ほぼ横ばいですね」で終わりそうです。
ところが分解すると、
既存顧客:1.0% → 5.0%
だったらどうでしょう。
中では大事件が起きています。
これはCVRに限りません。
- 全体アクセスは同じ。でも、自然検索が減って広告が増えた。
- 平均購入単価は同じ。でも、低価格商品が減って高価格商品が増えた。
- 問い合わせ数は同じ。でも、新規が減って既存が増えた。
中では「大変化」。
新規顧客は、急に買わなくなっている。既存顧客は、急に買うようになっている。
その裏では、何かが起きている。
でも平均値の世界は、今日も平穏です。
怖いのは変化を見落とすことだけではありません。
「なぜ新規顧客が買わなくなった?」という、本来生まれるはずだったWhyそのものが生まれなくなることです。
数字は正しい。判断を間違える。|平均化の落とし穴4
もう少し厄介なケースがあります。
LPのA/Bテストで、
LP_B:CVR 3.5%
なら、普通はAを採用します。
ところが新規・既存に分けてみると、
既存顧客:B > A
ということが起こり得ます。
どちらでもBが勝っているのに、全体ではAが勝つ。
これは統計学で「シンプソンのパラドックス」と呼ばれる現象です。

例えば、AにはもともとCVしやすい既存顧客が多く、Bには新規顧客が多かった。その構成比によって、全体の結果が逆転します。
ここで重要なのは、
ということ。
間違ったデータを見たわけではありません。
「誰がその数字を作ったのか」が消えると、正しい数字から間違った意思決定をすることがあります。
「Why」が消える|平均化の落とし穴5
ここまでの4つには、共通点があります。
Whatは残っている。
- CVRは2.3%だった。
- 料金ページで離脱した。
- スマホからCVしなかった。
- この記事から問い合わせは発生しなかった。
全部、事実です。
でも数字には、
- なぜ買った?
- なぜ買わなかった?
- なぜ離脱した?
- なぜ戻ってきた?
とは書いてありません。
その数字の向こうには、通勤電車で商品を見ていた人も、家族に相談していた人も、翌週もう一度検索した人もいるかもしれない。
問題は、数字にWhyがないことではありません。
Whatが分かると、Whyまで分かった気になりやすいことです。
たとえば、
「スマホのCVRが低い」というWhatがある。
そこから「スマホサイトが悪い」という結論へ進む。

でも、その間には本来ひとつ必要です。
平均化の怖さは、情報が減ることではありません。
だから、平均化するほどWhyは消えてしまう。

2. では、平均値を捨てるべきか?
もちろん違います。
10,000人を10,000人のまま分析することはできない。平均化は必要です。
ただし、
例えばCVRが落ちたら、
新規だけなのか。
特定の流入だけなのか。
特定の商品だけなのか。
平均値そのものはWhyを教えてくれません。
でも、
Whyが消えた、2つの事例
「スマホのCVRが低い」から、UIを改善した
あるサイトでは、
スマホ:0.9%
と大きな差がありました。
当然、スマホUIを疑います。
フォームを短くする。CTAを固定する。表示速度を改善する。
でも、CVRはほとんど変わりません。
顧客行動を調べてみると、
↓
後で会社のPCから申し込む
という人がいました。
別の人は、
↓
家族に相談
↓
数日後PCから購入
していました。

つまり、
スマホ=情報収集
PC=申し込み
という役割分担です。
デバイス別に集計した瞬間、一人の人間が、
「CVしないスマホユーザー」と
「CVするPCユーザー」
の二人に分裂していたのです。
「CVしない記事」を削除した
あるBtoBサイトでは、アクセスは多いのにCVRが0.2%しかない記事群がありました。
「問い合わせに貢献していない」と判断し、記事を整理。
ところが数か月後、サイト全体の問い合わせまで減りました。
改めて調べると、
という行動が見つかりました。

●顧客の時間軸で見れば「CVのきっかけになった記事」
です。
この2つで起きていることは同じです。
数字は間違っていません。
ただ、デバイスをまたぐ行動と時間をまたぐ行動が、集計の過程で切れていた。
検索クエリ、別セッション、問い合わせ内容、営業現場、顧客の声。
そこまで見て初めて、数字から消えたWhyが戻ってきます。
3. 数字を見たところから、分析は始まる
WEBマーケティングでは、これからも見える数字が増えていくでしょう。
それ自体は歓迎すべきことです。
ただ、
CVRが下がった。
それは答えではなく、現象です。
スマホからCVしない。
それも答えではなく、現象です。
WEBマーケターが見ている管理画面の向こう側では、今日も誰かが検索して、迷って、閉じて、また戻ってきています。
その人は、自分が「離脱率」になったことなんて知りません。
数字が教えてくれるWhatを使って、その向こうにあるWhyを探す。
Whyを探すための入口である。
平均化するほど、Whyは消えてしまう。
だからこそ、数字を見たところから、本当の分析は始まります。

WEBコンサルタントとして10年以上。
サイト制作だけでなく、SEO、広告運用、アクセス解析、UI/UX改善など、企画から運用・成長までを一貫して支援。事業開発やオウンドメディアの立ち上げ、広告戦略の最適化にも携わる。コンサルティング会社や広告代理店での経験を活かし「成果につながるWEBマーケティング」を得意とする。
仕事以外では、映画や音楽などのサブカルチャーも大好き。マーケティングだけに偏らず、日常の「面白い」や「なぜ?」をヒントに、新しいアイデアを考える時間も楽しんでいる。






