「AIから除外すれば解決」じゃない。Google新機能「オプトアウト」をSEO目線で読み解く
2026/06/04
Googleが、ウェブサイト運営者向けに「AI検索からの除外機能」を発表しました。Search Console上のトグルをオンにするだけで、AI OverviewsやAI Modeに自分のコンテンツを使わせないよう設定できます。
一見、出版社やウェブ担当者への配慮に見えますが、「これで問題解決」と受け取るのは早計です。
なぜ今この機能が登場したのか、実際に使うべきケースはどこか。SEO担当者が本当に知りたい部分を整理します。
目次-Contents-
まず「ゼロクリック問題」を押さえておく
この機能が生まれた理由を理解するには、まず「ゼロクリック問題」を知る必要があります。
AI Overviewsのような機能は、ユーザーの質問に対してGoogleの検索結果ページ上で直接答えを出します。便利なのは確かですが、裏を返すと「ユーザーが元のサイトに訪問しなくなる」ということでもあります。
コンテンツを作ったのはウェブサイト側なのに、AIに内容を使われ、流入は得られない。この非対称な構造が「ゼロクリック問題」で、特にメディア・出版業界では深刻な問題として受け止められてきました。
参考記事:サイトのトラフィックが減ってきた!?ゼロクリックサーチの可能性も!?
AI検索からの除外機能とは?何ができるようになるのか
Googleは2026年6月3日、Search Console内に新しいトグルを追加すると発表しました。このトグルをオンにすると、自サイトのコンテンツが以下の2つのAI機能に使われなくなります。
- ・AI Overviews:検索結果の上部に表示されるAI要約
- ・AI Mode:会話形式で使える新しい検索体験
テスト先行地域は英国の一部サイト、その後グローバルに展開予定です。
オプトアウトしても「通常の検索順位は変わらない」
なお、このAI検索から除外する設定のことを「オプトアウト」と呼びます(opt-out=特定の仕組みから外れることを選択する、という意味です)。この記事でも以降はこの表現を使います。
Googleは「オプトアウトしても、通常のオーガニック検索のランキングシグナルには影響しない」と明言しています。つまり、AIから除外しても従来の検索結果には引き続き表示され、検索結果ランキングにも影響はしない、ということです。
ただ、「Googleがそう言っている」という話であり、実際に長期的にどう影響するかは注視していく必要があるでしょう。
あわせて、Search Console上でAI検索における自サイトの表示状況(どのページが・どの国で・どのように引用されているか)を確認できるインサイト機能も追加されます。これはSEO担当者にとって純粋に使えるデータで、AI時代の戦略判断に役立つはずです。
なぜ今この機能が出てきたのか
機能の中身よりも、「なぜ今なのか」を考えるほうがSEOでは重要です。なぜこの機能が今追加されたのか、考えられる理由は大きく2つあります。
業界の反発が無視できないレベルになっていた
大手出版社Conde Nast(コンデナスト)のCEO、ロジャー・リンチ氏がインタビューで「昨年、全チームに『検索トラフィックはゼロ前提で戦略を作れ』と指示した」と明かしました。
後に「本当にゼロになるとは思っていない」と補足しましたが、Google経由の流入が「総トラフィックの一桁台のパーセンテージにまで落ちる」という予想を示しています。
世界規模のメディア企業が、GoogleをKPIの前提から外したということです。この発言がどれだけ業界に響いたかは想像に難くありません。
コンデナストのような大手だけでなく、中小ブログ・ニュースメディア・専門サイトでも同様の問題意識が広がっており、Googleとしても無視できる状況ではなくなっていました。
英国から始めるのは「規制対応」の意味合いが強い
英国は現在、デジタル市場に対する規制が強化されている地域のひとつです。Googleは今回の発表で、英国の競争・市場庁(CMA)との対話にも言及しています。
テスト先行地域として英国を選んだことは、規制当局に対して「私たちはパブリッシャーとのバランスを考えて動いている」という姿勢を示す意味があります。
EU圏でのDMA(デジタル市場法)をめぐる経緯でも同様のパターンは繰り返されてきました。
「オプトアウトすれば安心」ではない理由
ここが実務で一番重要な部分です。
オプトアウトは選択肢のひとつに過ぎず、万能な解決策ではありません。
AI Overviewsにサイトが引用されることには、ブランド露出やサイト名認知というプラス面もあります。除外すれば、AI検索経由のインプレッションはゼロになります。
さらに視野を広げると、もしコンテンツ提供者が次々とAIから離脱すれば、AIが生成する回答の質自体が下がる可能性があります。長期的にはGoogleにとっても望ましくない結果につながりかねず、このオプトアウト機能は「実際にはほとんどのサイトが使わないだろう」という前提のもとで設計されているとも読めます。
だからこそ、オプトアウトするかどうかは、自サイトの状況をしっかり把握した上で判断する必要があります。
オプトアウトを検討してよいケース
- ・コンテンツが中心で、AI要約で「内容が出し切られる」リスクが高い
- ・指名検索や直接流入でビジネスが成立しており、AI経由の認知拡大の優先度が低い
- ・AI Overviewsでの引用が、競合への誘導になっていることが確認できている
オプトアウトしないほうがよいケース
- ・コンテンツマーケティングで認知拡大を優先している
- ・AI経由の流入ユーザーのエンゲージメントやCVRが高い
- ・まだAI流入のデータ自体が取れておらず、判断材料が不足している
まずやること:AI流入の実態を数字で把握する
オプトアウトの是非を判断する前に、今の状況を計測することが最優先です。
2026年5月、GA4のデフォルトチャネルグループに「AI Assistant」チャネルが追加されました。ChatGPT・Gemini・Claudeなど主要なAIツールからの流入が、設定不要で自動的に分類されるようになっています。
GA4のレポートを開いて、AI Assistantチャネルの流入数・直帰率・CVRを確認してみてください。「思ったより来ている」「思ったより来ていないが質はいい」など、実態がわかると判断がしやすくなります。
Search Consoleの新インサイト機能が使えるようになったら、「AI Overviewsにどのページが引用されているか」も確認できるようになります。ここで初めて「このページはAIに使われているのに流入がない」「このページはAI経由でちゃんと来ている」という具体的な判断ができます。
参考記事:GA4にAI Assistantチャネル追加。AI流入は“分析対象”になり始めた
SEO担当者として今後どう考えるか
今回のGoogleの動きは、検索とコンテンツの関係が根本的に変わっていく過渡期のひとつのシグナルです。OpenAIやAnthropicがメディア企業とのライセンス契約を広げているように、AIによるコンテンツ利用に対価を支払うモデルも現実のものになりつつあります。Googleがこの方向へ踏み出すかどうかは、業界全体の次の大きな分岐点になるでしょう。
SEOの「成功指標」も変化しています。
従来は「キーワードで上位表示されているか」が中心でしたが、これからは「AIに信頼できる情報源として参照・引用されているか」という視点が加わります。コンテンツの作り方や品質の考え方を、少しずつアップデートしていく時期に来ています。
まとめ:今のSEO担当者がやるべきこと
✅GA4のAI Assistantチャネルを確認する
AI流入の量と質を把握するのが最初のステップです。データがなければ、オプトアウトの判断もできません。
✅Search Consoleの新インサイト機能に備える
日本展開後すぐに使えるよう、機能の存在を頭に入れておきましょう。どのページがAIに引用されているかが可視化されます。
✅オプトアウトは自サイトの状況で判断する
「除外すれば正解」ではありません。目的・収益構造・コンテンツの性質に合わせて決めてください。
✅E-E-A-Tの重要性は変わらない
AIに引用されやすいコンテンツと、検索で評価されるコンテンツは根本的に同じです。経験・専門性・権威性・信頼性を高める方向性はそのまま通用します。
Googleが今回「選ぶ権利」を与えた背景には、業界の反発・規制の圧力・AI検索の急拡大という複合的な事情があります。単純に喜ぶのでも警戒するのでもなく、「自分のサイトにとって何が最善か」をデータをもとに判断できる状態を作ることが、今のSEO担当者に求められる姿勢です。






